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萬念寺のお菊人形

髪の毛が伸びると言われた元祖、お菊人形

萬念寺(万念寺)は北海道岩見沢市栗沢町万字にある浄土宗の寺院です。

髪の毛が伸びる人形と言えば、全国的に知らない人がいないくらい有名ですが、その人形の元祖になったと言われているのがこのお寺の本堂に安置されている「お菊人形」です。

 

古来から日本人形には「髪が伸びる」「表情が変わる」「動く」「声を出す」「歯が生える」など、数々の怪奇現象が常につきまといます。

ではなぜこの萬念寺のお菊人形はそれほど有名なのでしょうか。

萬念寺のお菊人形にまつわる言い伝えを調べてみましょう。

 

お菊人形にまつわる話

お菊人形は元々は普通の市松人形だったそうです。

市松人形とは着物の着せ替えができるタイプの日本人形で、東人形、京人形などとも呼ばれ、京阪地方においては「いちまさん」の愛称で親しまれています。髪の毛には人毛を使うのだそうです。

萬念寺の近くに住む当時17歳だった「鈴木永吉」という人が大正7年に「菊子」という3歳の妹に買ってあげたのが、後々有名なお菊人形になる市松人形です。

 

札幌市で開催された北海道博覧会(大正博覧会とも言われている)を見物するため二人の兄妹は、8月15日に札幌へ出掛けました。その帰り道のこと、市内の狸小路の商店街で妹「菊子」にお土産としてオカッパ頭の胸の鳴る日本人形を買ってあげたそうです。

 

「菊子」はその日本人形をたいそう気に入り、寝床まで持っていき毎日一緒に寝るほど大事に可愛がったそうです。

しかし不幸にも、翌年の大正8年1月24日に風邪をこじらせて、わずか3歳でその生涯を閉じてしまいます。

葬儀の際に「永吉」は妹「菊子」の棺の中に人形を入れようと思っていたが、悲しみのあまり入れるのを忘れてしまいます。出棺後、お骨と一緒に忘れられた人形を仏壇に祀り、生前の「菊子」を思い出しながら日々を過ごしたそうです。

 

不思議な現象が起こり始めたのはちょうどその頃で、驚くべきことに人形の髪の毛が少しずつ伸び始め、家族は「菊子の魂が乗り移った」と信じて疑わなかったそうです。

その後、昭和13年(1938年)になって、鈴木家は北海道を離れ樺太に移ることになります。樺太に移転することになった「永吉」は、妹「お菊」と父「助七」のお骨とともに箱に入れた髪の毛の伸びる人形を萬念寺に預けたそうです。

戦後になり追善供養のため「永吉」は再び萬念寺を訪れます。人形を見つめると髪の毛は以前よりさらに伸びており、オカッパ頭だった髪が知らない間に肩にかかるほどまで長くなっていたそうです。不思議なこともあるものだと思い「永吉」は、あらためて人形を寺に納めて永代供養を申し出たそうです。

 

萬念寺のお菊人形

その後、人形は「お菊人形」と呼ばれて、正式に萬念寺(北海道空知郡栗沢町)の本堂に安置されるようになります。萬念寺に伝わる正式な「お菊人形の由来」は下記です。

 

大正7年、札幌市に於いて開催された大正博覧会を見物に8月15日出札(札幌へ出掛けること)狸小路の商店で、妹「菊子」にお土産として買ってきたオカッパ頭の胸の鳴る人形であった。「菊子」は大変喜び、毎日人形と共に楽しく遊んでいたが、不幸にして大正8年1月24日、3才にして死亡。葬儀の際、大切にしていた人形を棺の中に入れてやるのを忘れ、出棺後見つけたのでお骨と一緒に仏壇に祀り、生前の「菊子」を思い出しながら朝に夕に回向しているうちに、いつともなく髪の毛が伸び出した。その後、樺太に移転することになり、昭和13年8月16日「菊子」及び父親助七のお骨と人形を萬念寺に頼み出発…。終戦後、引き揚げて追善供養のため萬念寺に参詣。納骨した時より髪の毛が伸びており本当に不思議なことと思い、お人形を万念寺に 納め先祖代々供養をお願いした次第です。鈴木永吉

※鈴木永吉氏入館以後「お菊人形」と号し本堂に安置す。

 

3歳で早すぎる生涯を終えた「菊子」の魂が人形に宿ったに違いないと、持ち主だった幼子の名前を借り「お菊人形」と呼ばれる様になる。哀しくも不思議なお話ですね。

本堂に安置された「お菊人形」は着物を時々取り替えてもらい、大事に祀られているそうです。人形の厨子の一段下に置かれた位牌には 「大正八年一月二四日 菊法有禅童女」とあり、人形の所有者、鈴木菊子ちゃんの戒名が記されています。

 

伸びる髪の毛

その後の萬念寺に安置された「お菊人形」ですが、髪の毛はさらに伸び続け、腰のラインまで伸びたところで一度断髪されたそうです。

この時に切られた髪の毛は、北海道大学医学部に送られて分析されることになります。分析の結果、本物の人間の髪の毛(人間の幼児の頭髪)であることが確認されました。

それから毎年3月になると「お菊人形」の髪を切り揃える「整髪式」が実施されているそうです。しかし、髪の毛がもっともよく伸びた時期は、じつは先代の準応住職の時までで、現住職の代になってからは伸びる早さも鈍化したそうです。

じつは、髪の毛が伸びるという説には諸説があり、伸びるのではなく髪の毛がずれたという説もあります。人形の髪の毛の植毛時に、1本の長い髪を2つ折りにするという人形の植毛方法があり、10㎝の髪を2つ折りにして植毛すると5㎝の髪の長さの人形が出来上がります。

その2つ折りした髪が少しずつずれて元に戻り、髪が伸びた様に見えるという説がそれです。

しかし、この「お菊人形」がその植毛方法で作られたという事は立証されておらず、また初期の「お菊人形」はオカッパ頭だったという記述から、2つ折りにした髪の毛を元に戻して倍の長さにしたとしても腰のラインまで伸びないようにも思われます。

したがって、人形の髪が実際に伸びたと考えられますが、事実はどうなのでしょうか…?

 

さて、髪の毛が伸びなくなってきてから間もなくの事、1982年頃から「お菊人形」の口が少しずつ開きはじめるという奇怪な現象が起こりはじめたそうです。見る者によっては開いた口の中に歯が見えると言う人もいるそうです。

お寺の住職の話によると、昔と比べると人形の姿勢が少しずつ前かがみに変化してきているそうです。

たしかに以前に撮られた写真とその後の写真を比較すると、表情や雰囲気が何となく変化してるようにも感じられます。

3歳という短い生涯を終えた「菊子ちゃん」の魂が大人になりたいと願い、歳月とともに人形に変化を生じさせているのかもしれませんね…。

悲しげなその表情を見ていると胸がつまるような、何だか切ない気持ちになってきます。

 

現在の萬念寺ですが、以前はインターホンを押して住職にお参りの希望を告げるとお堂の中に入れてもらえたそうですが、現在も拝観できるのかはわかりません。

拝観した方のお話では「お菊人形」は魂が入っているため、「菊子ちゃん」が写真に撮られる事を嫌い写りが悪くなってしまうそうです。そのため写真撮影は禁止されているそうです。

ゲゲゲの鬼太郎で有名な水木しげるさんも訪れたという萬念寺。

拝観する機会があれば手を合わせ、幼くして亡くなった「菊子ちゃん」のご冥福をお祈りしたいものです。

 

地図

名称:萬念寺(万念寺)
住所:北海道岩見沢市栗沢町万字幸町75

コメント

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